行動心理学

ウィンザー効果をマーケティングに使おう!使用例や注意点も解説

「Webマーケティングでの結果がなかなか出ない」「ネットでの宣伝方法を見直したい」そんな時、参考にしておきたいのが「ウィンザー効果」です。行動心理学の世界で発掘されたこの効果、わたしたちの日常生活だけでなく、マーケティングの世界にも大きな影響を及ぼしています。

ウィンザー効果をマーケティングにうまく反映させて、売上アップ・集客力アップに繋げてみませんか?ここではウィンザー効果を使った宣伝の実例や、使用する際の注意点についても詳しく解説していきます。

ウィンザー効果とは?概要と歴史

ウィンザー効果とは行動心理学で使われる言葉です。その効果の内容とは「人間は第三者が発信した情報こそ、信頼に値するものだという判断をする」というもの。もっとカンタンに言うと「関係の無い”誰か”が発した評価こそ、人間は信頼をするものだ」ということです。


あなたは飲食店の店長です。アルバイトの学生を一人雇う予定があります。面接にはAさんとBさん、二人の学生が来ました。Aさんは面接で自分のことを「テキパキと物事を片付けるタイプです」とアピールしましたが、Bさんは特に自己アピールはしませんでした。

面接の後、Aさん・Bさんの行く学校のC先生が偶然お店にやってきました。C先生は「Bさんはテキパキと物事を片付けるタイプですよ」と言っていました。さて、あなたはAさんとBさん、どちらの学生をバイトとして雇いますか?

この質問に対して、70%以上の人は「Bさんを雇う」と回答しています。自分自身で「自分は優秀だ」とアピールしてくる人より、第三者が「あの人は優秀だ」と評価を下している人の方を「優秀に違いない」と判断した、というわけですね。

ウィンザー効果の発祥

ウィンザー効果のいわゆる「元ネタ」は、アメリカの作家アーリーン・ロマノネスの著作『伯爵夫人はスパイ』(原題:The spy went dancing、日本語翻訳版の出版は1991年)であると考えられています。

この作品はCIAのスパイとなった元モデルの女性が、あることをきっかけにして伯爵夫人となるというスパイもの。ヨーロッパ社交界を舞台にして、各国のスパイ合戦が繰り広げられます。

その華やかな社交界の中に登場するのがウィンザー伯爵夫人です。彼女のセリフには「第三者の褒め言葉がどんな時も一番効果があるのよ」というものでした。

でもなぜ、フィクションの登場人物の言葉が行動心理学に用いられるほどの影響力をもたらしたのでしょう?それは、この小説の作家であるロマノネス女史が、本当のスパイだったから。彼女は第二次世界大戦中に米戦略サービス局に勤務、その後はCIAでスパイとして働いていました。

「情報と人間心理を知りぬいた本物のスパイ」が書いた言葉であるからこそ、その言葉は重みをもち、心理学の世界で本格的に研究される心理効果となったのです。

ウィンザー効果の条件

ではもう一度、ウィンザー効果の条件を見直しておきましょう。

  1. 評価対象(相手)から直接ではなく「第三者からの評価」を聞くと、人間はそちらの方を信じやすい。
  2. 評価対象(相手)と第三者の間に利害関係がない場合のみ、ウィンザー効果の効果は強くあらわれる。
  3. 第三者の数が増えるほど、信憑性は高くなる。

特に重要なのは2.の点です。第三者と評価対象の間になんらかの利害関係がある場合だと、その評価の内容の信憑性は下がってしまいます。

例えば上の項目で上げた「アルバイト学生Bさん」と「C先生」がご家族だった…という場合等だと、Bさんに対するC先生の評価はどうなんだろう?と考える人も要ることでしょう。

評価に対する信憑性を上げるには、「まったく関係の無い第三者」からの声が「できるだけたくさん」集まっていた方が良いというわけですね。

ウィンザー効果をマーケティングに使った実例

ウィンザー効果は日常生活ではもちろんのこと、マーケティングの世界でも積極的に使われています。ここではその一例を見てみましょう。

1.ECサイトの「レビュー機能」

  • Amazon
  • 楽天市場
  • ヨドバシドットコム
  • ユニクロ
  • 無印良品 等

レビュー機能は、Amazon等の大手ネットショッピングモールが先駆けて導入し、その影響を受けて現在では大手系はもちろん、様々なECサイトで標準搭載されるようになりました。

レビュー機能とは、商品を購入したユーザーが、商品に対する満足度等の様々な点を書きこむことができる機能です。

評価方法

  • ☆の数による満足度評価
  • 使用感の評価
  • その他気づいた点等

楽天市場等ではレビューを「商品レビュー」と「ショップレビュー」に分けています。商品そのものについての感想と、ショップの対応(配送や顧客対応についての感想等)を分けて記載してもらい、より信憑性の高い評価を得ようとしているわけです。

「レビュー数」はランキングにも取り入れられており、レビューの多い商品はユーザーから選ばれやすい傾向にあります。

2.口コミサイト

  • アットコスメ(@cosme:化粧品、美容関連の口コミ
  • 食べログ:飲食店の口コミ
  • ホットペッパーグルメ:飲食店の口コミ
  • RETTY:飲食店の口コミ
  • ヘアログ:美容院の口コミ
  • じゃらんnet:旅館・ホテルの口コミ 等

口コミサイトの2大巨頭と言えば「アットコスメ」と「食べログ」でしょう。これらのサイトは元々、ユーザー同士の忌憚のない感想を口コミとして掲載することで、消費者にリアルに人気のある製品や店舗がわかるソーシャルサイトとし注目を集めました。

「アットコスメで口コミ数・評価数第一位」になった化粧品は「ベストコスメ」として人気が爆発し、売り切れが頻発するほど注目度を浴びるようになったのです。

近年ではアットコスメや食べログは企業や店舗とも提携し、口コミで話題の製品をサイト経由で直接購入したり、予約することができるようになっています。

ちなみに2018年に三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社によって行われたクチコミ・レビューに対する調査では、20歳以上のインターネットユーザーのうち、実に80%が「初めての商品やサービスを購入するとき、ネット上のクチコミ・レビューを参考にしている」と答えています。

レビューやクチコミの存在は、2010~2020年以降のマーケティングにおいてもはや欠かすことのできない存在となったのです。

3.「お客様の声」の掲載

  • 健康食品関連
  • 化粧品・美容グッズ関連
  • エステサロン
  • 塾・習い事関連
  • セミナー 等

「お客様の声(カスタマーズボイス)」を掲載する方法は、インターネット通販が定着する前、電話通販の頃から使われてきたマーケティング手段です。それだけ「ウィンガー効果」が発揮されやすく、売上や集客に影響を及ぼしやすいマーケティング方法とも言えるでしょう。

お客様の声」とは商品やサービスを利用したユーザーの「感想」「悩みの解決」「製品への感謝の言葉」などを掲載する方法です。

製品によってはユーザーの顔写真や名前を掲載したり、リアルさを重視するために、手書きのアンケート用紙や手紙などを掲載する場合もあります。

近年では、商品紹介のランディングページ等でこのような「お客様の声(カスタマーズボイス)」が多く掲載される傾向です。

4.モニター募集

上記の「クチコミ」や「レビュー」、また「お客様の声」などを集めるために、商品やサービスを利用者に試してもらう方法です。

モニターには実際の商品の試供品やお試しサービスなどを利用してもらい、その後に詳細なアンケートを行います。試供品やお試しサービスは無料提供とするか、もしくはワンコイン等の安価な価格での提供とするのが一般的です。

モニター応募者はもともと対象となる商品・サービスに興味がある層であることから、比較的好意的な意見が集まりやすいという企業側のメリットもあります。

ウィンザー効果を狙う場合の注意点

ウィンザー効果をマーケティングに反映させ売上アップ・集客力アップを狙うには、上の「ウィンザー効果の条件」で解説したとおり、「第三者からの評価は信憑性が高い」と見込み客に判断してもらう必要があります。

とにかく第三者に評価をしてもらえば良いというわけではありません。次のような点に注意をすることが大切です。

ネガティブな意見も掲載する

クチコミやレビューが集まった時、「見込み客に良い印象を与えたいから」と、ネガティブなクチコミを削除していませんか?褒めているクチコミやレビューばかりでは、残念ながらウィンザー効果は十分には発揮されません。

どのような製品・サービスにも良い点・悪い点がある」ということは、消費者の誰もが無意識に感じています。絶賛ばかりのクチコミには「嘘がある」と捉えられ、レビューの信憑性が下がってしまうのです。

もちろん製品に対する大打撃となるようなネガティブな意見はコントロールすべきではありますが、多少のネガティブさがあることは「ポジティブな感想が本当である」という証拠にもなります。絶賛・褒め言葉だらけのレビュー掲載をしないようにしましょう。

「第三者」の人物像を把握させる

ウィンザー効果を担うのは「第三者の声」ですが、この第三者が「完全な匿名で、何だかよくわからない人」だと、ウィンザー効果はあまり発揮されません。

次のような「第三者が誰なのかがわかる状態」であるほうが、見込み客達はその声を信頼し、ポジティブな評価を受け入れやすくなるのです。

▲ 信憑性が高くなる
・顔写真が掲載されている
・本名が掲載されている
・サービス利用中の写真掲載がある
・居住地域がある程度わかる
・年齢層(20代・30代等)がわかる
・イニシャルやアカウント名が付けられている
・性別がわかる
・特定情報が一切ない
▼ 信憑性は低くなる

「お客様の声」には写真や名前を

ランディングページやチラシなどに掲載する「お客様の声」では、その顧客の顔写真や名前なども掲載できるのがもっとも理想的です。顧客の笑顔の写真が掲載されるだけでも、消費者は疑念や不安を和らげ、信頼感を持つ心理的傾向を持っています。

「商品レビュー」も性別や年齢層を

シンプルな商品レビューの場合、本名掲載や写真掲載はちょっと……と抵抗感を持つ消費者も多いことでしょう。こんなときには、個人特定はできない程度の情報(性別、年齢層等)だけでも入力をしてもらうことをおすすめします。

「どこの誰だかまったくわからない」というより「神奈川県に住む30代の女性」と言われた方が、評価の信憑性はアップするのです。また年齢や居住地等を入力してもらうことは、次の項目で説明する点にもメリットがあります。

ターゲット層と同じ層の意見を掲載する

アンケート等でたくさんのレビューやお客様からの声が集まった場合には、今後のターゲット層がどこなのかを考えて意見を抽出しましょう。

ターゲット層の特定

  • 年齢層
  • 性別
  • 居住地
  • 家族構成
  • 収入
  • ライフスタイル
  • 悩み  等

例えば「ニキビ対策の基礎化粧品」だとターゲット層は10代がメインとなりますが、「大人ニキビ向けの基礎化粧品」だと30代前後の女性がメインになってきますね。アンチエイジング基礎化粧品なら、年齢層はもっと上がります。

ニキビ対策の基礎化粧品の感想に30代のユーザーの感想を掲載してもあまり反響は得られないでしょう。反対にアンチエイジング基礎化粧品の感想に20代女性のクチコミを載せても、効果は得にくいはずです。

反対にターゲット層とクチコミを書いている人の年齢や悩みがマッチしていれば、ターゲット(見込み客)は「この評価は信頼できそうだ」と判断しやすくなるわけです。

製品・サービスのターゲット層がどこなのかを見据え、そこに近いユーザーのクチコミやレビューを積極的に掲載するようにしましょう。

おわりに

行動心理学の世界で見つけられた「ウィンザー効果」は、うまく使えば売上大幅アップ・集客力アップにも繋げることができる心理効果です。ただし、重要なのは「この第三者の声は信憑性がある」と見込み客に思ってもらうこと。まずは競合他社等のマーケティング方法を見てみて、どのようにクチコミやレビューが使われているかチェックしてみてはいかがでしょうか。

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